藤ノ木古墳
紅の葬送・赤布使い、ベニバナまく?埋葬法解明
未盗掘の石棺が88年10月に開けられた奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳(6世紀後半、国史跡)の埋葬は、真っ赤な布などで包んだミイラ状の遺体を真綿の敷布団に安置して掛け布をした、という手順だったことがわかった。
吉松茂信・宮内庁正倉院事務所技官(古代染織史)らが、県立橿原考古学研究所の依頼で棺内の繊維遺物を調べて突き止めた。
古墳埋葬の実態が確認されたのは全国で初めて、防腐などを目的に、棺全体にベニバナをまいた可能性も指摘されている。
(朝日新聞、2007年(平成19)10月6日、編集委員 小滝ちひろ)
調査したのは吉松氏、沢田むつ代・東京国立博物館上席研究委員。
その結果、プロセスは@ 棺底に真綿を数層敷き、絹の敷布を置く。 A 二人の被葬者のうち北側の男性(20歳前後)を、絹や綿を十数枚重ねて包み安置。 B 南側の男性(20〜40歳)を同様に包み、掛布で覆う。 C 北側男性の側からも布をかけて2人とも覆う。 D 刀剣6本をそれぞれ、数枚重ねの絹袋に入れて納める。 とわかった。
布や袋は中間に必ず、顔料の朱で着色した赤布を使っていた。特に南側の男性を包んだ布は、一番外側が真っ赤だった。
又、棺内の花粉を分析した金原正章・奈良教育大学(古環境学)によると、ベニバラの花粉が濃濃度で確認された。
二人の遺体は、古代エジプトで見られるように内蔵を取り除くなどミイラ化された可能性があることが95年に報告されている。
吉松氏は「悪霊を恐れて赤い布でくるんだのだろう」、金原氏は「棺内に散らしたと見られる大量の花は葬送儀礼か、防腐用では」と見る。
古墳時代は埋葬前に被葬者を古墳外にしばらく安置する「殯(もがり)」をしたらしい。今回の研究は殯の姿をさぐる糸口にもなりそうだ。
(朝日新聞)